ありんくりんレポート
in阿嘉島(2022年3月16日、3月20日)
 

 阿嘉島へは2010年5月26日以来の渡島です。まず、16日の天気は快晴、絶好の離島日和となりました。智の主な目的はケラマジカの撮影、私は阿嘉〜後原林道の散策、途中の嶽山展望台で迷シジミを狙う?ことと大きな目標を立てていました。泊港でチケット購入、昼食の用意をしていざ乗船場へ。チケット販売の「とまりん」から高速船「クィーンざまみ」の乗船場まで私の足で約15分、しかし、あろうことか左足がコムラガエリ・・・。幸い1本杖を持参していたので杖をつきながら、なんとか乗船、船の中でひたすら足のマッサージをして、少しはマシになりました。
阿嘉港からすぐのモンパノキにアサギマダラが2♂舞っていました。チンタラ、チンタラと阿嘉〜後原林道をゆっくり登って行きました。林道は蝶が来そうな花としてランタナが多く、ケラマツツジ、カッコウアザミがあります。アサギマダラはポツポツみられました。ゲートから15分歩くと左手にオオゴマダラが乱舞する谷があります。ここはアグの浜分岐地点で、左に下るとアグの浜へ向かいます。私はそのまま真っ直ぐ、嶽山展望台を目指しました。急な上り坂が続き、痛めた足を休み休み、さらにゆっくり登っていきます。途中、右手に入る分岐がありますが、ここには道標がなかったので、無視をしてそのまま登ると道沿いにケラマツツジが植栽された林道になり、オキナワカラスアゲハが数頭いました。ネットを組み立ててなかったのですが、ツツジの花で吸蜜に没頭していた個体を駄目元で狙って幸運にも綺麗そうな♂を手づかみで採集できました。慶良間のオキナワカラスアゲハは赤の斑紋の出が良い変異があります。少し下り坂になり、左手に公衆トイレが見え、右に嶽山展望台道標があります。入り口は少し藪漕ぎして登って行きます。山頂までの遊歩道の両脇はケラマツツジが植栽されているのですが、ススキやリュウキュウチクが蔓延りそうになっていて非常に登りにくくなっています。メゲそうになりながらも何とか山頂の展望台に辿りつきました。途中でウスイロコノマチョウを1頭目撃できました。山頂では展望台がありますが、ひらけた周囲はススキで覆われています。展望台からの眺めは良く慶良間諸島が一望できます。山頂にツマグロヒョウモン1♂がいましたが、残念ながら変わったシジミは見られませんでした。

20日の天候も晴れ時々曇りのまずまずのお天気です。前回、無謀な計画だったので今回は阿嘉〜後原林道からアグの浜方面へ、その後、阿嘉公園へ行くことにしました。一番驚いたのは数日しかたっていないのに、アサギマダラを1頭も見れなかった事です。オキナワカラスアゲハも前回よりかなり少なく、林道で全く見ず、阿嘉公園でようやく3♂を確認したのみでした。16日と比較して、アグの浜方面の林道でルリウラナミシジミ1♂を確認できました。また、林道でツマムラサキマダラ1♂、ツマベニチョウ1♂を確認できました。オオゴマダラはアグの浜方面分岐の谷にやはり乱舞していました。アグの浜林道には2箇所の谷筋があり川が流れています。冬場、マダラが篭りそうな場所となっています。季節を変えてまたこの林道に入って見たいと思いました。阿嘉公園は「離島大好き採集ガイド」で紹介した場所ですが、鬱蒼と木々が覆い環境が悪くなっていました。阿嘉展望台は見晴らしが良く開けているので、ここで粘るとオキナワカラスアゲハが狙えるかもしれませんが、あまりパッとしない環境になってしまいました。ちなみに、阿嘉公園はかつてカワカミシロチョウなども得られた好ポイントでした。

島の自然について帰宅後、新田智と話をしました。島の植生でケラマジカの影響か、センダングサやシロバナシマアザミなどキク科植物がほとんどなく、ノカラムシ、ヨモギなども見られなかった事。浜辺や集落にはヒレザンショウが多かった、林道にはランタナ、意外とススキやすげ植物が多かったこと。このことはケラマジカの食害で植生が貧相になり多様性が脅かされているのではと想像しました。オオゴマダラが多かったのはホウライカガミやツルモウリンカなど鹿が好まないキョウチクトウ科、ガガイモ科などが多いかもしれません。ただ、気になったのがジャコウアゲハ、ベニモンアゲハを全く見なかった事です。一概にはいえない、自然は奥深いのだなと思いました。ヤマトシジミがいることはカタバミなどがあるからでしょう。鹿の口の構造上で小さすぎる植物を好まない?、それではススキなどのイネ科植物は草食動物は好みそうだけど・・・。など疑問が残ります。ただ、一つ言えることはケラマジカは総個体数が極端に少ない希少動物である事は確かだと思います。個体数が多く群れをつくれるようでしたら、写真も簡単に撮影できるでしょうし、島の環境からもっと植生が貧相で多様性がなくなっているかもしれません。ケラマジカの由来はもともと薩摩藩が持ち込んだものとされています。小さな島で固有化し、島の植生の多様性がなくなってしまったことを考えると、人為的な移入は生態系を変えてしまう(島に鹿がいなかった元々の生態系を知りませんが)のではないかと思いを巡らせました。
《2022年3月16日、阿嘉島で観察・目撃した蝶(観察者;特記がないかぎり新田敦子)》
 チャバネセセリ(智)・アオスジアゲハ・アゲハ(智)・シロオビアゲハ・ナガサキアゲハ・モンキアゲハ・オキナワカラスアゲハ・キタキチョウ・ウスキシロチョウ・ツマベニチョウ(智)・モンシロチョウ・ナミエシロチョウ・ウラナミシジミ(智)・ヤマトシジミ・アサギマダラ・リュウキュウアサギマダラ・オオゴマダラ・ツマグロヒョウモン・リュウキュウミスジ・ルリタテハ・イシガケチョウ・リュウキュウヒメジャノメ・ウスイロコノマチョウ。
《2022年3月20日、阿嘉島で観察・目撃した蝶(観察者;すべて新田敦子・※新田智は慶留間島へ)》
 アオスジアゲハ・シロオビアゲハ・ナガサキアゲハ・モンキアゲハ・オキナワカラスアゲハ・キタキチョウ・モンキチョウ・ツマベニチョウ・モンシロチョウ・ナミエシロチョウ・ヤマトシジミ・ルリウラナミシジミ・リュウキュウアサギマダラ・オオゴマダラ・ツマムラサキマダラ・リュウキュウミスジ・ルリタテハ・イシガケチョウ・リュウキュウヒメジャノメ。記録の詳しくは阿嘉島蝶の記録へ。(文責;新田敦子・写真は全て新田智撮影

リュウキュウヒメジャノメ♂ 阿嘉島 2022年3月16日 アサギマダラ♂(モンパノキの枯れ枝を吸っている)阿嘉島 2022年3月16日 オキナワカラスアゲハ♂(エゴノキの花で吸蜜)慶留間島 2022年3月20日 オオゴマダラ(ヒラミレモンの花で吸蜜)慶留間島 2022年3月20日