ありんくりんニュース
フタオチョウ越冬蛹を追跡せよ(2012年1月1日〜4月)
 年の始、元旦早々から野外活動を始めました。リュウキュウエノキで発生するフタオチョウの越冬蛹を探しだし、羽化シーンまで撮影するという計画を立てました。1個体につき、3枚の写真を選択しています。18個体の追跡をお楽しみください。写真・観察は全て新田智。個々の写真解説は以下にまとめました(カッコ内は撮影時間)。
《個体1 2012年1月1日〜3月4日》
 蛹。羽化の始まり(14時2分)。この個体は♂で羽化失敗に終わりました長い時間抜け出ようと頑張りましたが、とうとう抜け出る事はできませんでした(14時26分)。
《個体2 2012年1月1日〜3月8日》
 蛹。羽化の始まり(9時43分)。排泄の瞬間(9時48分)。
《個体3 2012年1月1日〜3月8日》
 蛹。羽化の始まり(12時14分)。排泄の瞬間(12時54分)。
《個体4 2012年1月1日〜3月11日》
 蛹。羽化の始まり(10時20分)。胴体が抜け落ちた瞬間(10時25分)。
《個体5 2012年1月1日〜4月11日》
 蛹。死蛹にハエの幼虫が付く。寄主脱出。
《個体6 2012年1月1日〜3月11日》
 蛹。羽化前日の蛹。3月11日7時12分には羽化していました(7時59分)。
《個体7 2012年1月1日〜3月13日》
 蛹。8時48分には羽化していました。飛び立つ前に翅を大きく広げます(13時17分)。
《個体8 2012年1月1日〜3月14日》
 蛹。8時59分には羽化していました。翌日の3月15日まで同じ場所にいました(13時56分)。1日以上とどまっていた事になります
《個体9 2012年2月19日〜3月7日》
 蛹。この蛹は木の梢で蛹化してました。3月7日には羽化殻になってました。羽化シーン撮影失敗。高い場所での蛹は色の変化が分かりにくいです
《個体10 2012年2月19日〜3月21日》
 蛹。羽化前日の蛹。3月21日12時54分には羽化していました(13時24分)
《個体11 2012年2月24日〜3月9日》
 蛹。羽化の始まり(16時16分)。時折吹く風に柔らかい翅がスカートのようにゆらゆらします(16時27分)
《個体12 2012年2月24日〜3月7日》
 蛹。羽化が近づくと眼のあたりが黒ずんできます。羽化殻になってました。羽化シーン撮影失敗。
《個体13 2012年2月24日〜3月19日》
 蛹。羽化の始まり(15時03分)。胴体が抜け落ちた瞬間(15時05分)、口吻を伸ばしてます
《個体14 2012年2月25日〜4月11日》
 蛹。羽化が近いのか黒くなって来ました。しかし、羽化の兆しも無く死んでしまったようです。個体5とこの個体2例が死蛹でした
《個体15 2012年3月1日〜3月14日》
 蛹。羽化しそうです(13時43分)。すでに羽化が終わってました(15時32分)、瞬間を逃しました
《個体16 2012年3月8日〜3月16日》
 蛹。羽化していました(12時51分)。少し翅がいじけ気味の個体、飛ぶ力が弱かったのか足に落下しました(13時15分)、その後、上手に飛び立ちました
《個体17 2012年3月8日〜3月23日》
 蛹。羽化前日の蛹。羽化していました(12時50分)
《個体18 2012年3月9日〜3月19日》
 蛹。羽化前日の蛹。羽化していました(13時23分)

個体1 越冬蛹 1月1日 個体1 羽化開始 3月4日 個体1 ♂羽化失敗 3月4日 個体2 越冬蛹 1月1日 個体2 ♂羽化 3月8日 個体2 ♂羽化 3月8日
個体3 越冬蛹 1月1日 個体3 ♂羽化 3月8日 個体3 ♂羽化 3月8日 個体4 越冬蛹 1月1日 個体4 ♂羽化 3月11日 個体4 ♂羽化 3月11日
個体5 越冬蛹 1月1日 個体5 死蛹 4月11日 個体5 寄主脱出 5月3日 個体6 越冬蛹 1月1日 個体6 羽化前日 3月10日 個体6 ♀羽化 3月11日
個体7 越冬蛹 1月1日 個体7 ♂羽化 3月13日 個体7 ♂羽化 3月13日 個体8 越冬蛹 1月1日 個体8 ♀羽化 3月14日 個体8 ♀ 3月15日
個体9 越冬蛹 2月19日 個体9 越冬蛹 3月4日 個体9 羽化殻 3月7日 個体10 越冬蛹 2月24日 個体10 羽化前日 3月20日 個体10 ♂羽化 3月21日
個体11 越冬蛹 2月24日 個体11 ♀羽化 3月9日 個体11 ♀羽化 3月9日 個体12 越冬蛹 2月24日 個体12 越冬蛹 3月1日 個体12 羽化殻 3月7日
個体13 越冬蛹 2月24日 個体13 ♀羽化 3月19日 個体13 ♀羽化 3月19日 個体14 越冬蛹 2月25日 個体14 越冬蛹 3月30日 個体14 死蛹 4月11日
個体15 越冬蛹 3月1日 個体15 羽化前蛹 3月14日 個体15 ♀羽化 3月14日 個体16 越冬蛹 3月8日 個体16 ♀羽化 3月16日 個体16 ♀羽化 3月16日
個体17 越冬蛹 3月8日 個体17 羽化前日蛹 3月22日 個体17 羽化殻 3月23日 個体18 越冬蛹 3月9日 個体18 羽化前日蛹 3月18日 個体18 ♀羽化 3月19日
1月1日に見つけた蛹が8蛹、羽化シーンを狙いに途中経過の写真を撮影に訪れるたびに蛹を追加する事ができました。2月19日に1蛹、2月24日に4蛹、2月25日に1蛹、3月1日に1蛹、3月8日に2蛹、3月9日に1蛹と18蛹を追跡する事になりました。羽化の瞬間から撮影できたのは6個体でした(うち1蛹は羽化失敗)。羽化失敗が1個体、死蛹が2個体、すでに羽化が完了していたのが8個体で、殻のみは3個体という結果になりました。なかなか瞬間から撮影することは難しいですね。それにしましても追跡調査は根気のいる話ですね。
最後に思う事、お願いが一つ。こうして公開すると、フタオチョウの撮影がしたいのですが場所を教えてくださいとか案内お願いしますといった依頼が増えて来ます。本種は、ご存知の通り天然記念物で採集はできません。依頼された方が写真メインである事、そして信頼のおける方であったとしましても、こういったご依頼には一切お応えしないようにしています。ご本人がカメラマンであったとしましても、撮影データを付けたり、知人に話をされることもあるかと思います。その知人から次々に広まり、結局は撮影がメインの方とは違う方々に情報を広めてしまう結果になるかもしれない、それが怖いのです。今回の撮影場所を公表していないのは、こうした理由からです。ご容赦いただきたく、お願いします。