ありんくりんコラム(2017年1月25日現在)
迷蝶になりやすい蝶、なりにくい蝶
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 このコーナーは私の考えなどの覚え書き、その時々のメモ書き、独り言みたいなものです。今後、歳をとるごとに考えや思い込みが覆る事も多々あるかとは思います。ということで、現時点の考えをメモする事は恥ずかしい事かもしれませんが、そこはご愛嬌で受け止めていただけると有り難いです。

●迷蝶になりやすい蝶、なりにくい蝶
迷蝶のバロメーターといえば、リュウキュウムラサキでしょう。季節の変わり目、沖縄に住んでいますと「今日はいい風が吹いているな〜」と感じると、どこかでこの蝶と遭遇できます。遠くの海上で台風が発生した時もいち早く目にするのがこの蝶です。リュウキュウムラサキは型というのがあるので、由来もわかり大変面白いです。
迷蝶を考える時、今までの記録や情報を繙くと変遷や傾向が見えて来ます。また採れ方や発生の有無などによって迷蝶の楽しみ方が変わります。。
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●1頭のみ記録がある迷蝶(2017年1月現在)
これまでに日本で1頭のみの迷蝶はどのくらいあるでしょう。手元の資料から拾ってみました。
なお、2007年までの蝶研出版の頃に知り得たもの以降は皆無ですので最新の追加記録をご存知でしたら、ご教示頂けると有り難いです。と、まずはお願いしておきましょう。
ニセシロオビアゲハ1♂ 与那国島新川線 2015年7月20日 木下茂之
オナシモンキアゲハ1♂ 与那国島西崎 2000年7月26日 新田智
マダラシロチョウ1♂ 与那国島 2010年7月28日 塩野崎雅夫
メスジロキチョウ1♂ 奄美大島 1965年10月23日 仁平勲
コウトウシジミ1♀ 石垣島 1939年4月12日
シロアサギマダラ 1♂ 与那国島宇良部岳 1995年6月20日 田花雅一
タイリクアサギマダラ 鹿児島県指宿市魚見岳 2015年5月17日 前薗佑磨
シロモンルリマダラ1♂ 那覇市 1973年7月13日 下地英嗣
コリンナルリマダラ1[♀] 愛知県名古屋市 2003年8月11日 川口節子
アジアテングチョウ1♀ 宮古島 2005年6月20日 坂井誠
ヒメウラベニヒョウモン1♂ 与那国島貢原 1993年7月31日 西田信夫
トラフタテハ1♂ 那覇市 1961年7月4日 与那城義春
※トラフタテハについてはエピソードがあります。その昔、新田智が八重山行きの際、港で蝶愛好家の方が話しかけて来たそうです。その話の内容は同氏が石垣島でトラフタテハを採集して当時知人だった沖縄在住の故後藤氏へ標本をプレゼントしたとのこと。その後、同氏が沖縄に訪れた時、後藤氏の案内のもと一緒に今帰仁村玉城林道に出かけ、なんと同氏がまたもやトラフタテハを発見、すぐに後藤氏を呼んで採らしてあげようとしたが、結局採集に至らなかったという話。石垣で採集されたその方は世に名前をだしたくない、発表することを考えていない方だったので、譲り受けた後藤氏も報告しなかったよう。今、その標本はどうなっているのだろう?。
シロタテハ1頭目撃 糸満市 1981年12月13日 片野茂樹
クビワチョウ1♂ 神奈川県横須賀市 1990年4月28日 竹下亨
モリシロジャノメ1♂ 北海道利尻島 1978年7月25日 逸見裕敏
ソンダイカコノハワモン1頭目撃 与那国島 2004年5月2日 菅原春良
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●同時期に2頭採集されその後採集記録のない蝶
タイワンビロウドセセリ1♀ 与那国島久部良岳 2001年6月14日 森崎譲、1♀ 与那国島アンガイミドゥチ 2001年5月26日 竹上敦之
ユベンタヒメゴマダラ1♂ 与那国島宇良部岳 1998年4月30日 畑井興三、1♀ 与那国島宇良部岳 1998年9月24日 清水高志
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●初記録後、ずいぶん後に追加記録された蝶
カルミモンシロチョウ1♂ 与那国島新川線イランダ林道比川口付近 1996年7月1日 高木秀了(日本初記録)→2♂ 与那国島久部良岳 2014年7月11日 林秀行、1♂ 与那国島ドナン岳 2014年7月16日 平尾頼信、1♀ 西表島大富林道 2014年7月24日 木下茂之
タイワンヤマキチョウ1♀ 与那国島 1995年6月22日 小泉健一、1♂ 与那国島 1995年6月29日・1♂ 与那国島 1995年6月30日 松村謙一(両者日本初記録)→1♂ 与那国島 2008年4月25日 西條実
ベニシロチョウ1♀ 石垣島 1969年7月12日 浜(日本初記録)→1♀ 与那国島ドナン岳 1998年6月26日 高木秀了、1♀ 与那国島イランダ 1998年6月21日 中尾正宏
オオヤマミドリヒョウモン1♀ 鹿児島県山川町 2005年10月16日 田中直邦(日本初記録)→1♀ 福岡県志摩町 2007年8月19日 中村悠一、1♂ 鹿児島県指宿市 2007年10月16日、1♂ 鹿児島県指宿市 2007年10月25日 
ウスイロネッタイヒョウモン1♀ 鹿児島(宝島)1991年8月1日 田中裕二(日本初記録)→1♂ 石垣島新川 2003年10月25日 宍倉万夫
ルリボシタテハモドキ1♀ 宮古島 1975年8月8日 福原孝好(日本初記録)→1♂ 西表島 2011年7月26日 平松完→1♀ 石垣島 2013年8月23日 長瀬正義
クロタテハモドキ1♂ 石垣島 1984年8月22日 片野茂樹(日本初記録)→1♂ 与那国島宇良部岳 2005年11月9日 小野寺連子→1♂ 与那国島嵩農道 2015年7月12日 坂本正徳
ヒョウマダラ1♂ 奄美大島 1978年9月26日 北ノ国文雄(日本初記録)→1♂ 西表島大原 2002年10月22日 宍倉万夫
ララサンミスジ1♀ 宮崎県 1970年9月2日 (日本初記録)→1♀ 石垣島 1985年10月28日 坪内千香子
ヒメヒトツメジャノメ1♀ 石垣島川平 1983年3月24日 田中美紀(日本初記録)→1♂ 与那国島イランダ林道 1995年9月30日 西條実→1♂(乾期型)与那国島 2012年10月5日 塩野崎雅夫
ルリモンジャノメ1♂ 竹富島 1994年4月30日 中井衛(日本初記録)→1♂ 与那国島 2002年6月26日 岩藤能明
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●発生迷蝶
迷蝶には発生迷蝶というのもあります。発生迷蝶は生態観察するうえで、未知の食草を探し出したり野外で幼生期の発見など楽しみの幅が広がります。では、今までに飛来地で発生迷蝶はどういった種類があるでしょう(「*」は私たちは未確認で他の人の記録)。
キシタアゲハ;1♀ 波照間島 1995年11月3日 後藤和夫氏(日本初記録)。その翌年の1996年に波照間島でリュウキュウウマノスズクサで発生を確認している。
コモンタイマイ;1♀ 石垣島 1990年9月10日 吉田良和(日本初記録)。1995年には与那国島でタイワンオガタマで発生を確認している。
オナシアゲハ;1987年秋 与那国島で発生を確認された*。
ホシボシキチョウ;九州では季節になるとカワラケツメイで発生を確認される年がある。沖縄では石垣島で2004年秋にリュウキュウカワラケツメイで発生を確認している。
キシタウスキシロチョウ;1♀ 石垣島 1990年10月23日 龍居明、1♀ 竹富島 1990年10月23日 塚越章雄(両者日本初記録)。1991年に石垣島においてハナセンナで発生を確認している。
タイワンモンシロチョウ;対馬では土着扱い。沖縄では与那国島で発生を確認されている*。
クロテンシロチョウ;与那国島においてギョボクで発生を確認している。
ヒメアサギマダラ;与那国島においてヨナグニカモメヅルで発生を確認している。
マルバネルリマダラ;西表島におてガジュマルで発生を確認されている*。波照間島産♀からホソバムクイヌビワを用いて飼育(卵〜羽化)を試みた。
ツマムラサキマダラ;沖縄本島においてリュウキュウテイカカズラ、オオイタビ、ガジュマル、ホウライカガミで確認している。
ガランピマダラ;石垣島産♀からリュウキュウテイカカズラを用いて飼育(卵〜羽化)を試みた。
ヒイロシジミ;2004年に西表島においてクロヨナで発生を確認している。
シロモンクロシジミ;西表島においてコナフキカイガラムシ、ハンエンガタカイガラムシで発生を確認している。
カクモンシジミ;波照間島においてハギカズラで発生を確認している。
シロウラナミシジミ;西表島においてハナシュクシャ、ゲットウ、イリオモテクマタケランで発生を確認している。
ヒメウラボシシジミ;西表島においてハナシンボウギで発生を確認している。
ホリイコシジミ;ヤナギバルイラソウ、ケブカルイラソウ、ランタナで発生を確認している。
クロマダラソテツシジミ;ソテツで発生を確認している。
タイワンヒメシジミ;与那国島においてヒメノアズキで、西表島においてタヌキコマツナギ・ナンバンコマツナギで発生を確認している。
ウラベニヒョウモン;与那国島においてシダレヤナギで、西表島においてイイギリで発生を確認している。
キミスジ;石垣島においてアオカラムシで、西表島においてノカラムシで発生を確認している。
ジャノメタテハモドキ;西表島においてリュウキュウウロコマリで発生を確認している。
イワサキタテハモドキ;西表島においてオギノツメで発生を確認している。
イワサキコノハ;沖縄島産♀からエランセムモドキを用いて飼育(卵〜羽化)を試みた。
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●発生を確認できていない迷蝶
同時期に大量に採集・確認されているにも関わらず確実な発生の確認ができていない種もあります。
カワカミシロチョウは八重山地方では常連迷蝶で時に沖縄本島周辺でも大量に得られる事があります。食草はツゲモドキ類だと判明していても、幼生期の確認には至っていません。ちなみに、伝聞ですが、沖縄本島金武町観音寺のツゲモドキに付いていたナミエシロチョウの幼虫群から1頭カワカミシロチョウが羽化したという話を聞いたのが唯一です。カワカミシロチョウについては、想像ですがナミエシロチョウより、選り好みが強くより柔らかな新芽を好むのではないかと考えたりします。だとしたら、2015年の大量飛来の年、与那国島を直撃した大型台風の後、食草だと思われるツゲモドキに大きなダメージが起こり、植物は新芽を出そうと頑張りますので、その時だったらもしかしたら発生のシッポをつかめたかもしれません。あれほどの台風の後でしたら地元のナミエシロチョウは吹き飛ばされたり幼虫も生き残るのは大変だったかと思います。その後もカワカミシロチョウが得られていたとしたら、それは発生個体だったかもしれません。
この他、ホリシャルリシジミ、タッパンルリシジミなどがあげられます。さらに迷マダラ類も未知が多いです。ただ、マダラの♀は卵を持っていても成熟するまである程度の期間があるようで、産むタイミングを当てるのが難しく、さらには幼虫時期が極端に短く食痕も目立ちません。そのような事から見逃されてしまうケースが高いのかもしれません。いずれにしましても、八重山に移住できたらと夢のような事を妄想します。
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●迷蝶になりやすい蝶、なりにくい蝶
迷蝶というと特別なイメージがありますので、移動蝶として考えるのがより的確なのかもしれません。移動し続ける蝶、移動先で発生しさらなる新天地を目指す蝶、移動先で定着する蝶と様々あります。移動蝶の最たる物はアサギマダラでしょう。アサギマダラは季節に応じて北上、南下します。これはある種の宿命なのかもしれません。同種にあっても移動する個体群とその地に留まる個体群があるのかもしれません。食草、気象状況、天敵などの外的要因に刺激されると、より敏感に察知し移動する個体群は、DNAに組み込まれた宿命ともいえる個体なのかも?。例えれば個々にON、OFFのスイッチが備わっていて様々な外的要因でより移動性が敏感に反応しONとなる個体、それらが群となって移動を始めるのかもしれません。話が逸れますが、新田智は2016年夏に瀬底島でヤエヤマカラスアゲハを採集しました。その個体は多くの体脂肪を含んでいたそうで、アゲハ類がこのように多くの体脂肪を蓄えているのに驚いたと話してました。ウスキシロチョウのギンモン型も無紋型よりも体脂肪が多いそうで、鹿児島県など迷蝶として得られる個体はギンモン型が多いような気がします。ということは、移動する個体は体脂肪を蓄えた個体群?といった考えもでてきます。
迷蝶になりにくい種は私なりに思いつくのは、ジャコウアゲハ、オオゴマダラ、アカボシゴマダラではないかと考えています。それでも、アカボシゴマダラは近年、奄美大島以外でも記録が上がっているようですが・・・。ジャコウアゲハは宮古の個体郡のことを考えると特化している(オオゴマダラも八重山と本島では亜種扱い)事から、より定着性・土着しているような気がします。ジャコウアゲハに相対するのがベニモンアゲハです。ベニモンアゲハはより移動性が高い蝶だと私は考えています。
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●移動は進化の過程?
表題を語ろうとすると一番に思いつくのがクロマダラソテツシジミです。本種は1992年10月23日に三橋渡氏が初記録されました。2001年には与那国島で発生が確認され、その後、2007年〜2008年に八重山全域で記録が上がるようになり、さらには沖縄本島、徳之島と記録は北へ上がって行き、千葉県、東京都、神奈川県といった関東地方まで記録されるようになりました。初記録から10年近くの年月を経て、5年くらいで八重山一帯までの足がかりを作ったかと思うと、あれよあれよと北上していった経緯を考えると地球規模の気象変化にいち早く適応・順応する能力に進化、それは移動という進化の選択をしたのではないかと考えます。それにしましても、クロマダラソテツシジミのソテツへの執着と探し出す能力は凄いなと感心させられます。薄暗い樹林の中のソテツにさえ発生し、成虫を確認した場所もあり、決してオープンな蝶というイメージではないような気がしました。さて、沖縄本島でも秋口から個体数を減らして行きますが国頭村の辺戸岬で無数のクロマダラソテツシジミを確認した事があり、正に北端に集結したといった感じでした。このとき星の数ほどのクロマダラを目撃し想像した事は、これからいざ海を渡る時、仲間を呼び合うフェロモンか何かを出して集結し、いっせ〜ので海へ飛び出すのではないかと考えたのでした。
進化というと大げさなのですが、2016年に変化があったのは本島のバナナセセリでした。2016年は大きな台風の直撃もなく、バナナの葉が無傷で切れる事もなく幼虫にとっては理想的な環境が整ったといえるでしょう。今までは本島内での発生で離島での確認は出来てませんでした。しかし、去年は与勝諸島の伊計島、うるま市宮城島、平安座島、浜比嘉島、薮地島、そして津堅島でそれぞれ発生を確認できました。話は少し逸れますが、迷蝶は同時期・多発的に出現するというパターンがあります。例えば1980年代のコウトウマダラはそれに当たるかと思います。ということで、同時多発的に見られた今回のバナナセセリ、採集個体は何だか翅型が縦長、斑紋も今までとは微妙に違うような?。うるま市にはホワイトビーチ米軍基地がありますが、グァムからの船も帰航するだろうし、バナナセセリのパターンから考えるとひょっとしたら別種のバナセセリ?と、良からぬ妄想が・・・。結局は矢後先生にDNA鑑定していただき、間違いなくバナナセセリ(Erionota torus)と判明しました。あわよくば別種という妄想が消えた瞬間でしたが、この移動性は生態的な進化をとげつつあると言った方が良いのかもしれませんね。ちなみにメール配信しています「ありんくりん連絡蝶」、今年の年賀状にそのバナナセセリ標本写真を掲示しています。お確かめください。微妙に縦長だとは思いませんか?。
クロマダラソテツシジミのソテツ、バナナセセリのバナナ、両者は食草については固執し独占しています。ヤマトシジミもカタバミを独占した蝶だと言えます。ヤマトシジミは安定した雑草のカタバミを独占したことで安定的な繁栄を続けて来ている種、だから迷蝶(移動蝶)にはなりにく蝶だと思い込んでいました。それが覆ったのが、2015年、2016年と渡島した南浮原島です。南浮原島は浮原島とともに無人島でウサギが棲息しています。ウサギは美味しそうな下草を食いつくし、蝶の食草になりそうなマメ科植物などや吸蜜源となるセンダングサ類もありません。このような島ですので確認できる蝶の種類も数えるほどしか居ません。そんな中、南浮原島で2015年、2016年と明らかに迷蝶(海を渡って来た)と思われるヤマトシジミを新田智が採集しています。安定的な繁殖・繁栄をしているかのようなヤマトシジミでさえ、渡りをしていた事実に驚きを隠せませんでした。なお、南浮原島のヤマトシジミは「ありんくりん通信19号」の後記で記録しています。
ハマヤマトシジミの食草はヒユ(ヒユ科)だけだと思い込んでいましたが、最近コメツブウマゴヤシ、シナガワギなどマメ科植物も利用していると報告されました。ホリイコシジミも以前はランタナ類(クマツヅラ科)だけかと思ってましたが、ケブカルイラソウ、シソモドキ、ヤナギバルイラソウといったキツネノマゴ科でも発生を確認されました。これらの蝶は食性を広げる事で進化し、より移動性を高めて来ているのではないかと想像します。我が家ではカクモンシジミが飛来してこないかと期待して、ナンバンコマツナギを植栽しています。肝心のカクモンシジミは飛来したためしがないのですが、時期になるとミナミキチョウとウラナミシジミは頻繁に♀が産卵にやって来ます。しかし、いまだに幼虫を確認した事がありません。ただ、今はそうであっても長い年月をかけて新食草となるかもしれません。この他、食性を広げつつある蝶としてアオスジアゲハ(ゲットウ)などもあります。
激変する自然環境に順応しようと進化する中で、移動を選択し自らの体脂肪を溜め込む個体、群れで移動するためフェロモンか何かを発する個体、新食草を求める個体と様々です。これを進化の途中経過だったのだなと分かるのはさらに長い年月が必要になるかと思います。私たちにできることは、その小さな蝶達の変化に気づき記録し続ける事ではないでしょうか?。
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●真の土着とは
沖縄の蝶を継続して見たり、昔の話を新田智に聞くにつけ、沖縄、八重山であっても真の土着というのは少ないのかもしれないと考えるようになりました。八重山のルリウラナミシジミやメスアカムラサキ、リュウキュウムラサキなどは真の土着ではないような気がする。連続して見られるような気がしているが、実はたえず南方から移動し血の供給により一時発生しているのではないかと?。カバタテハは、何らかの要因で血の供給が途絶えてしまったため、尻すぼみになったのではと思う。そうなると不思議に思うのはタイワンキマダラです。同じような場所(極小的)に継続して見られることは土着化してきている?。謎の蝶は多いですね。
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●独り言
ここから先は、私の思う事なので偏った考え方だと笑われそうなのですが、ご勘弁を。
少なくとも自然を相手に真摯に向き合おうとするならば、人為的な事はやってはいけないと考えています。私たちは極端な話、自然界の中では異端であって、他の生物にとって迷惑な生き物なのかもしれないと思うのです。都合の良い解釈のもと、山を削って水脈を断ち切り、環境を変え、営みのため野山を焼き、排気ガスをバラまき散らかす。地球温暖化や異状気象の責任は人間の営みからきていると認識しなくてはなりません。
保護したいと言う名目からギフチョウの蛹をバラまくとか、自分の身の回りに居たら美しいからといった単純かつ浅はかな考えでホソオチョウなど放蝶する行為はやはり辞めてもらいたいと現時点で思っています。
自然保護の名目で過剰な保護はかえって(その種に対して)自然破壊の手助けになりかねないと思っています。飼育状況下で天敵や病気の心配もなく、自然でない室内環境で育ち、しかも累代であれば血の更新もされないまま野外に放たれることは害しかないかと思っています。その種にとって長い年月、時間をかけてその時々の自然環境に順応(進化)しながら生きながらえた強い遺伝子を外から操作された遺伝子と交配させることですから、危険な事ではないでしょうか?。自然界は厳しく淘汰される遺伝子は多く、強い遺伝子のみが生き残りバトンを繋げて行くものだと考えています。そもそも絶滅の方向に向けた最大の問題は、人間の営みで自然環境の悪化が加速度的にすすませた事だと。人間以外の生き物は、悪化する環境破壊スピードに順応(進化)スピードが追いつけない事から起こっているのだと考えます。人間が快適と感じる環境は他の生き物に試練を与えていると肝に銘じなければ真の保護に繋がらないような気がします。本気で、100年〜150年前の環境・気象状況に戻さなければ地球全体が危ないと考えています。
放蝶行為は問題外、即刻やめてもらいたい行為です。蝶や自然から真剣に研究、学びたいと考えている方々にとって迷惑以外なにものでもない行為です。迷蝶など記録を集積して分かることが多くあります。その年々にどんな気象状況があってどのような迷蝶が入って来たか、将来において過去の記録を繙く事によって分かってくる事は、人間にとっても重要かつ有益なことです。その中に、人為が入っては困るのです。
先に書いてますが沖縄で言えばオオゴマダラ、八重山と本島では亜種扱いで斑紋で一目見てわかる形態です。こういった違いについて遠い将来、別種になる可能性があります。そんな中、人為的な放蝶はやってはならない事です。迷蝶になりにくい蝶も居るという証拠が断たれてしまうのは悲しいし、将来の研究者に損害を与える結果をまねくのではと懸念しています。結論、飼育した個体は標本に残しましょう。
『小路嘉明の蝶を楽しむ』の中に「迷蝶を運ぶ風」という記事があります。1991年当時、小路さんの迷蝶に関する考えも読んで頂けると幸いです。